芳辞 · 楚辞を読む

憫上

王逸

寒さの縮こまりと潤いを待つ

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哀世兮睩睩,諓諓兮嗌喔。

世の睩睩たるを哀しむ、諓諓として嗌喔たり。

世の人々が目を光らせて様子をうかがうのを悲しむ。こそこそと巧言をささやき、媚びる声が絶えない。

众多兮阿媚,骪靡兮成俗。

衆多阿媚し、骪靡して俗を成す。

多くの者が心を曲げて媚びへつらい、なよなよと人に従うのが世の風俗となってしまった。

贪枉兮党比,贞良兮茕独。

貪枉党比し、貞良煢独なり。

貪欲でよこしまな者は徒党を組んで結びつき、忠貞で善良な者は孤独でよるべがない。

鹄窜兮枳棘,鹈集兮帷幄。

鵠枳棘に竄れ、鵜帷幄に集まる。

白鳥は枳や棘の茂みに身を隠し、鵜のほうが帷幄の中に集まっている。

罽蕠兮青葱,槁本兮萎落。

罽蕠青葱として、槁本萎落す。

野草の罽蕠は青々とつやを帯びて茂り、香草の藁本はしおれて落ちている。

睹斯兮伪惑,心为兮隔错。

斯の偽惑を睹て、心為に隔錯す。

こうした偽りと惑いを見て、私の心はそのために乱れて狂う。

逡巡兮圃薮,率彼兮畛陌。

圃藪に逡巡し、彼の畛陌に率ふ。

園や茂みの間でためらいながら歩き、あの田のあぜ道をたどって行く。

川谷兮渊渊,山阜兮峉峉。

川谷淵淵として、山阜峉峉たり。

川や谷は深々として底知れず、山や丘は高く大きく連なっている。

丛林兮崟崟,株榛兮岳岳。

叢林崟崟として、株榛岳岳たり。

茂みの林はぎっしりと重なり、切り株と榛の木がごつごつと生い立つ。

霜雪兮漼溰,冰冻兮洛泽。

霜雪漼溰として、冰凍りて洛沢す。

霜と雪は厚く積み重なり、水辺は寒さに涸れて凍りつく。

东西兮南北,罔所兮归薄。

東西南北、帰薄する所罔し。

東も西も南も北も、身を寄せてとどまる所はどこにもない。

庇廕兮枯树,匍匐兮岩石。

枯樹に庇廕し、巌石に匍匐す。

枯れ木の下に身を隠し、岩の間を這い回る。

蜷跼兮寒局数,独处兮志不申。

蜷跼して寒局数し、独り処りて志申びず。

身を縮めてうずくまり、寒さに窮屈に押し込められ、ひとり住まいして志は伸ばせない。

年齿尽兮命迫促,魁垒挤摧兮常困辱。

年歯尽きて命迫促し、魁塁擠摧せられて常に困辱す。

年はもう尽きて命は迫り、胸には思いがわだかまって、押しのけられ挫かれ、いつも困窮と恥辱を受ける。

含忧强老兮愁无乐,须发苎悴兮顠鬓白。

憂ひを含みて強ひて老い愁へて楽しみ無く、鬚髪苧悴して鬢白を顠す。

憂いを抱いて早くも老い込み、愁えて楽しみはなく、髭と髪は乱れてやつれ、鬢はまだらに白くなった。

思灵泽兮一膏沐,怀兰英兮把琼若,待天明兮立踯躅。

霊沢の一たび膏沐せんことを思ひ、蘭英を懐きて瓊若を把り、天明を待ちて立ちて躑躅す。

天の恵みの雨が一度でも潤してくれることを願い、蘭の花を抱き、杜若を手に持ち、明君の現れる時を待ちながら、立ちつくして足踏みしている。

云蒙蒙兮电鯈烁,孤雌惊兮鸣呴呴。

雲蒙蒙として電鯈として爍き、孤雌驚きて鳴くこと呴呴たり。

雲は濛々と垂れこめて稲妻がさっとひらめき、ひとりの雌鳥が驚いて呴呴と鳴く。

思怫郁兮肝切剥,忿悁悒兮孰诉告。

思ひ怫鬱して肝切り剥がれ、忿りて悁悒たり、孰にか訴へ告げむ。

思いは鬱屈して肝は切り裂かれるように痛み、憤りと憂いを抱えて、いったい誰に訴えればよいのか。

辞意のまとめ

老いは、理解されたいという心を奪ってはいない。