芳辞 · 楚辞を読む

疾世

王逸

道を問い信を失う

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周徘徊兮汉渚,求水神兮灵女。

周く漢渚に徘徊し、水神の霊女を求む。

漢水の中州のほとりをあちこちさまよい歩き、水の神の霊女を求めて思いを慰めようとする。

嗟此国兮无良,媒女诎兮謰謱。

嗟此の国良無く、媒女詘にして謰謱たり。

ああ、この楚の国には君臣ともに善き人がなく、仲立ちの女は口下手で、言葉は乱れて要領を得ない。

鴳雀列兮譁讙,鸲鹆鸣兮聒余。

鴳雀列なりて譁讙し、鴝鵒鳴きて余を聒す。

鴳雀のような小人が朝廷に居並んでがやがやと騒ぎ、鴝鵒が鳴き立てて私の耳をやかましくかき乱す。

抱昭华兮宝璋,欲衒鬻兮莫取。

昭華の宝璋を抱き、衒ひ鬻がんと欲するも取る莫し。

昭華の美玉と宝の璋を抱え、売り歩こうとしても、誰も買おうとしない。

言旋迈兮北徂,叫我友兮配耦。

言に旋り邁きて北に徂き、我が友を叫びて配耦せんとす。

そこで私は向きを変えて遠く北へ向かい、わが賢い友を呼んで連れ合いにしようとする。

日阴曀兮未光,阒睄窕兮靡睹。

日陰曀して未だ光らず、闃として睄窕として睹る靡し。

北方の太陽は曇って翳り、まだ光がない。奥深い暗がりをのぞき込んでも、何一つ見えない。

纷载驱兮高驰,将谘询兮皇羲。

紛として載ち駆りて高く馳せ、将に皇羲に諮詢せんとす。

私は慌ただしく車を駆って高く走らせ、伏羲皇に相談してはかろうとする。

遵河皋兮周流,路变易兮时乖。

河皋に遵ひて周流すれば、路変易して時乖く。

黄河の岸辺に沿ってあちこち巡り歩くが、道は変わって定まらず、時運もまた背く。

濿沧海兮东游,沐盥浴兮天池。

滄海を濿りて東に遊び、天池に沐し盥浴す。

滄海を渡って東へ遊び、滄海という天池で髪を洗い、身を清める。

访太昊兮道要,云靡贵兮仁义。

太昊に道の要を訪へば、仁義より貴きは靡しと云ふ。

東方の青帝太昊を訪ねて天の道の要諦を問うと、仁義より貴いものはないと答えた。

志欣乐兮反征,就周文兮邠岐。

志欣楽して反り征き、邠岐の周文に就く。

心は喜びに満ちて西へ引き返し、邠と岐の地に周の文王を訪ねて身を寄せる。

秉玉英兮结誓,日欲暮兮心悲。

玉英を秉りて誓ひを結ぶも、日暮れんと欲して心悲しむ。

玉の花を贈り物に携えて文王と誓いを結ぶが、日は暮れようとし、心はまた悲しくなる。

惟天禄兮不再,背我信兮自违。

惟れ天禄再びせず、我が信に背かば自ら違ふ。

天の与える福禄は二度とは来ない。わが忠信に背いて時流に従えば、それはみずからに背くことだ。

逾陇堆兮渡漠,过桂车兮合黎。

隴堆を逾えて漠を渡り、桂車合黎を過ぐ。

隴堆の山を越え、砂漠を渡り、西方の桂車山と合黎山を通り過ぎる。

赴昆山兮馽騄,从邛遨兮栖迟。

昆山に赴きて騄を馽ぎ、邛に従ひて遨びて棲遅す。

崑崙山に赴いて駿馬の騄耳をつなぎ、邛邛の獣に従って遊び、そこにとどまってあたりを見回す。

吮玉液兮止渴,齧芝华兮疗饥。

玉液を吮ひて渇きを止め、芝華を齧みて飢ゑを療す。

玉の液を吸って渇きをいやし、霊芝の花をかじって飢えをしのぐ。

居嵺廓兮尠畴,远梁昌兮几迷。

嵺廓に居りて疇尠く、梁昌に遠くして幾ど迷ふ。

がらんとして人気のない所に住んで連れは少なく、よるべを失った遠い地で、もう少しで惑いそうになる。

望江汉兮濩渃,心紧絭兮伤怀。

江漢の濩渃たるを望み、心緊絭して懐ひを傷む。

長江と漢水の広々と大きな水を望み、心はもつれ絡んで、故郷を思って傷む。

时昢昢兮且旦,尘莫莫兮未晞。

時昢昢として且に旦けむとし、塵莫莫として未だ晞かず。

空はほのかに白み、今にも夜が明けようとするが、塵の霧は濃く立ち込め、まだ晴れない。

忧不暇兮寝食,吒增叹兮如雷。

憂へて寝食に暇あらず、吒りて歎きを増すこと雷の如し。

憂いに寝る暇も食べる暇もなく、怒りの叫びに嘆きが重なり、その声は雷のように響く。

辞意のまとめ

道理を得ることは、現実で居場所を得ることと自動的に等しくはない。