悲回風
屈原
回風と独り芳しきこと
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悲回风之摇蕙兮,心冤结而内伤。
回風の蕙を揺らすを悲しみ、心冤結して内に傷む。
つむじ風が蕙を揺らすのを悲しみ、心は無念に結ぼれて内に傷む。
物有微而陨性兮,声有隐而先倡。
物微にして性を隕とす有り、声隠れて先づ倡ふる有り。
物の中には微弱で命を落とすものがあり、声の中には隠れていながら先に唱え出すものがある。
夫何彭咸之造思兮,暨志介而不忘!
夫れ何ぞ彭咸の思ひを造し、志介に暨びて忘れざる。
どうして彭咸の心をこうも思い続けるのか、その節操に与して、どうしても忘れることができない。
万变其情岂可盖兮,孰虚伪之可长?
万変する其の情豈に蓋ふ可けむや、孰か虚偽の長かる可けむ。
万に変わる心をどうしてすべて覆い隠せようか、誰の虚偽が長く続くことができようか。
鸟兽鸣以号群兮,草苴比而不芳。
鳥獣鳴きて以て群を号び、草苴比びて芳しからず。
鳥や獣は鳴いて仲間を呼び、生草と枯草は並び合って香りを放たない。
鱼葺鳞以自别兮,蛟龙隐其文章。
魚は鱗を葺ねて以て自ら別ち、蛟竜は其の文章を隠す。
魚たちは鱗を重ねて自らを際立たせ、蛟竜はその文様を隠してしまう。
故荼荠不同亩兮,兰茝幽而独芳。
故に荼薺は畝を同じくせず、蘭茝は幽にして独り芳し。
それゆえ苦菜と薺は同じ畝には生えず、蘭と茝は奥深い所で独り香る。
惟佳人之永都兮,更统世以自贶。
惟ふ佳人の永く都にして、世を更統して以て自ら貺ふるを。
思えば、あの佳き人は長く都にあり、代々その世を統べて、自ら受け継いでいる。
眇远志之所及兮,怜浮云之相羊。
眇かに遠志の及ぶ所、浮雲の相羊するを憐れむ。
高く遠い志は先賢に及ぼうとするのに、浮き雲のようによりどころなく漂う我が身をあわれむ。
介眇志之所惑兮,窃赋诗之所明。
眇志を介して惑ふ所、窃かに詩を賦して明らかにする所なり。
高遠な志を守り通すことがかえって惑いをもたらし、ひそかに詩を賦して心を明らかにするのだ。
「独芳」は擾乱の中でなお芳潔を保つことを、「相羊」は寄るべなくさまようことを書き、自守と漂泊が同時に現れて、孤独が環境にも相容れない選択にも関わることを示す。